私立学校のイメージを象徴する「色」、御存知の通り立命館は「えんじ」です。
でも立命館の始まりの頃、その色は「紫紺」でした。
今でも、立命館の校旗の色は「紫紺」です。そして「えんじ色」はスクールカラーとして「門旗」その他の学園イメージとして使われています。
今回はこのお話。
<紫紺の校旗>
1913(大正2)年12月2日、立命館は「財団法人立命館」を設立します。
同年12月10日には、それまで「私立京都法政大学」「私立清和中学校」としていた校名を「私立立命館大学」「私立立命館中学」と変更しました。
西園寺から譲り受けた「立命館」の名は、ここで初めて法人や学校の名称となったのです。
これに伴い、校旗も改製されました。
立命館の広報誌であった『立命館学報』第1号(1914年2月)には校旗の改製について掲載されています。(改製ですから、これ以前にも校旗はあったはずですが、現在のところ不明です。)
校旗改製 学校名改称の結果自然校旗の改製を要することゝなり地質を塩地織にし之を紫紺色に染め中に白く立命館大学又は立命館中学と抜出し其の旗竿を漆塗にし竿頭に鎗身を附することにしたり
また、校章の色指定については、『立命館学園広報』(1971年6月20日)に
昭和10年頃には、立命の文字を金モール、その中央に大学の場合は大を、専門学部には専、というように銀モールであらわした。現在の校章になったのは昭和16年頃である。これらの年月日は、敗戦後、禁衛立命の解体を急いで書類の焼却を行ったため、さだかではない。
とあります。
立命館大学校旗(現在使用されている校旗)
立命館中学校校旗(現在使用されている校旗)
<えんじ色の門旗>
紫紺の校旗は、現在も入学式や卒業式の時、壇上に掲げられています。
ところで、みなさんが良く目にするであろう、式典の際校門に掲げられている学校の旗は「門旗」と呼び、「校旗」ではありません。
この「門旗」がえんじ色に染め抜かれていることもあって、えんじ色の印象が強くなっています。
その「門旗」がこれ
立命館高等学校門旗
<えんじはスクールカラー。何時決まった?>
立命館を象徴し、「門旗」を始めいろいろな広報物やクラブの旗などに、スクールカラーとして使われているえんじ色。
意外なことに、この色が公式に記録されたのは大昔のことではなく、1994年が最初でした。
1994年3月9日の常任理事会は、学園のコミュニケーションマークを「RITS」と定めるにあたって「明るいえんじ」をスクールカラーとしました。
続いて2007年9月12日の常任理事会はコミュニケーションマークを「RITS」から「R」に変更するにあたり、これまでと同じ「えんじ色」とするとしました。
えんじ色は、この年代よりもはるか昔から使用されていましたが、上記の常任理事会の決定にあたっては、「えんじ」の歴史的経過については触れていません。
それでは、実際には何時頃から使用されていたのでしょうか?
「立命館大学応援歌」は、「えんじの旗をなびかせて」と歌っていますが、この応援歌は1949(昭和24)年にできたと言われています。
また、立命館大学の陸上競技部の『創部60周年記念誌』(1987年)によりますと、1932(昭和7)年の日本学生陸上に出場したのちえんじ色のユニフォームを作ったことが書かれています。
これらのことは学校として公式に決めたものではありませんが、えんじ色は既に昭和の初期から愛用されたと考えられます。
<各校の校旗の誕生>
現在の「立命館大学」と「立命館中学校・高等学校」の校旗は、1913年の校旗改製によって紫紺と定められています。
ではその後に誕生した「立命館アジア太平洋大学」「立命館宇治中学校・高等学校」「立命館慶祥中学校・高等学校」「立命館守山中学校・高等学校」そして「立命館小学校」はどのような経過で校旗が誕生したのでしょう。
立命館アジア太平洋大学(APU)
2000年4月に誕生したAPUの校旗は、1999年12月1日の常任理事会において、APUのシンボルマークを活用してイメージを統一させる。立命館学園内の1大学として、校旗のベース色はえんじ(APUカラー)を使用し学園全体のアイデンティティの共有化を図るとして定められました。
(上)立命館アジア太平洋大学の門旗(下)同 校旗
立命館宇治中学校・高等学校
立命館宇治中学校・高等学校は、1994年に法人合併して誕生しました。1994年7月22日の理事会において、校章と校旗について定められています。
校章は、合併前の宇治高等学校で用いられていた「宇治茶の葉」デザインに「立命」および高等学校を意味する「高」を組み合わせ、配色は「宇治茶の葉」を銀、「立命」を金、「高」を銀としています。
校旗は、紫紺の地に校章を用いたものとし、校旗の左側面に縦書きで「立命館宇治高等学校」の名称を入れる。
門旗は、えんじの地に「宇治茶の葉」を白ヌキ、「立命」を橙色、「高」を黒縁取りとする。
となっています。
その後、立命館宇治中学校が誕生しますが、高等学校に準じて定められました。
(上)立命館宇治中学校の門旗、(下)立命館宇治高等学校の校旗
立命館慶祥中学校・高等学校
立命館慶祥高等学校は、1995年12月の法人合併時には立命館大学慶祥高等学校として開校しました。校章・校旗等について1995年12月22日の理事会で定めています。
校章の図案を、背景は雪と星をデザイン化し、未来に向けて光輝く高校のイメージを強調しており、同時に線の集合は人の集まりを外周の六角形が輪(和)をイメージしている。中心部には立命館学園共通の「立命」の文字、高校を表す「高」の文字を重ね合わせている。
校旗の仕様は立命館宇治高等学校作製の際のものに準ずる。
としています。2000年4月立命館大学慶祥高等学校は、立命館慶祥高等学校と改称、同時に開校した立命館慶祥中学校の校章・校旗も既成の校旗に準じて製作されています。
(上)立命館慶祥高等学校の門旗 (下)立命館慶祥中学校の校旗
立命館守山中学校・高等学校
2006年4月開設の立命館守山高等学校の校章・校旗は、2005年7月15日の理事会で次のように定められました。
校章は滋賀県に設置される附属高校であることと、世界水準の人間形成をめざす立命館守山高等学校の拡がりを、びわ湖の水面で広がっていく様子で表している。文字は接続先である立命館大学ならびに立命館アジア太平洋大学の「立命」の文字デザインを基本とし、高等学校を意味する「高」を組み合わせたものとする。配色は、円の部分が白地に銀色、「立命」が金色、「高」をえんじ色とする。
校旗はえんじ色の地に、上記の校章を用いたものとするとし、立命館守山中学校については、2006年10月27日の理事会で高等学校に準じて定められました。
(上)立命館守山中学校門旗 (下)立命館守山高等学校校旗
立命館小学校
立命館小学校は2006年4月の開校ですが、2005年6月22日の常任理事会で、次のように校章を定めました。
「立命館小学校の児童は立命館中学校・高等学校へ進学することが設置委員会で確認されているので、接続先である立命館中学校・高等学校のデザインを基本とした。また、小学校と初めての社会(輪)の中で学ぶ・友情の輪をイメージしている。」
このコンセプトから、立命館高等学校・中学校の校旗に準じて製作されています。
(上)立命館小学校門旗 (下)立命館小学校校旗
※本稿執筆にあたっては、㈱クレオテック、㈱川島織物セルコン、㈱三上旗店、総務課・管財課・立命館各校などのご協力をいただきました。
また、『立命館学園広報』第20号(1972年4月20日)の記事「スクール・カラーと校歌のこと」および『立命館百年史紀要』第18号(2010年3月)の「立命館学園の「校章」「襟章」「その他の徽章」等について」を参照しています。
2016年2月29日 立命館 史資料センター